姿勢

円(えん)から連想する言葉は、美しい、滑らか、やさしいなどでしょうか。

形のみならず、動きにもこれらの言葉は当てはまります。

人の身体は、止まった状態や動きの中で色んな円を表現でき
それには多くの骨、関節の連動があります。

ある一つの機能が低下しても、きれいな円を描くことができず
そこには必ずできない理由があり、多くの場合身体の不快症状を伴います。

逆を言えば、描けるはずの円が描けないところから
身体の不具合箇所に辿り着くことができます。

球関節である肩関節(肩甲上腕関節)は
身体を左右に隔てる矢状面に対して円を描くことができます。

より大きな円を描くには、肩甲骨、胸郭(肋骨、胸椎など)の連動が必要で
腰椎、骨盤帯など下肢を構成する骨、関節との連動にまで及びます。

古代象徴の一つにウロボロスという自分の尾を飲み込んで丸を作る図がありますが
始めと終わりがなく、不老不死の象徴として、調和の意味を持ちます。

滑らかな円を描く動きができるということは
調和のとれた身体を現すと言えます。

 

続、良い姿勢であるための条件

姿勢

きれいな姿勢だ、と思う人はセスジが伸びていると表現されます。

セスジが伸びると何が違うのか。

文字通り、セスジ・背筋に力が入ることで
地面に対して身体がまっすぐに伸びた感じになります。

そして、たくさん空気が身体に入ってくる感じがします。

数年前から流行りのコアマッスル、横隔膜を使った呼吸が
意識に上るようになります。

横隔膜は、心臓や肺など、主に肋骨で覆われた胸腔と
胃や腸などを収める腹腔を隔て
呼吸(腹式)に大きく関わる筋肉(随意)です。

不良姿勢によって、この横隔膜の機能が低下します。
呼吸が浅くなったり、体幹の支持が不安定になります。

感情は姿勢に現れますが、嬉しいとき、楽しいとき
背中が丸くなり前かがみにはなりません。

塞がれたり、落ち込んだ気持ちのとき人は前かがみになります。
よって、不良姿勢によって気持ちが沈むことになります。

運動を敢えてしようとしなければすることのない今
老若男女問わず、この状態に陥る人ばかりに見えます。

不良姿勢、横隔膜、呼吸の法則で行くと
横隔膜を使った呼吸ができれば姿勢の改善につながり
体幹の安定、機能的な身体が得られるということになります。

長引く腰下肢痛が、横隔膜の操作で緩解する症例がありました。

やはり身体は、全身の相互作用によって機能しています。

 

良い姿勢であるための条件

姿勢

身体の不調改善のため、姿勢には常に言及していますが
良い姿勢、正しい姿勢の解剖学的な表現(側面重心線が一直線)は
他覚的に評価するためのスケールです。

本来、身体の不調に起因する姿勢であれば
その状態は長く保つことができません。

つまり、痛みや強張りといった不調を生じない姿勢とは
ずっとその状態でいても疲れを感じにくいものです。

見た目と使い方は、少しニュアンスが違うということです。

更に、長く保持できる=ラクでもありません。

なぜならば、“保つ”(自動詞)ということは、そこに意識が入るからです。

寝る(横になる)ことは除き、イス文化になった今も、立つ・座るで
身体と地面が接する部位は足(おしり)になります。

この足と地面がそれより上の身体の位置と
動きによって連動する接し方になっている状態が良い姿勢と言えます。

車のタイヤは常に地面と接しており、スピードや路面状況に関わらず
常に同じ接地をすることで車体の安定を計っています。

地面からの力を、常に同じポイントで吸収、分散しています。

イスに座ったとき、脚を組むと片方の足しか接していないため
座面の力も均等ではなくなります。

背もたれに過剰に身体を預けると
接する部位とそれ以上の位置関係が不安定になり代償が生まれます。

前提として足裏3点(母趾球、小趾球、踵)
これが均等に接していることが肝要になります。

 

連動③

姿勢

痛みや凝りといった症状を持つほとんどの人に動作の制限があります。

肩が痛いからといって肩だけに動きの制限があるのではなく
それ以外にも見られることもしばしばです。

これは、動くために(姿勢を安定させるために)全身が連動していることを意味します。

全身の骨

身体には、正しい使い方があります。

正しい身体の使い方の前提は、良い姿勢と言っても良いと思います。

容姿端麗なモデルでも、腰が痛かったり肩が凝ったりします。

また、腰の曲がった、おじいちゃんおばあちゃんの全てが
腰痛かといえばそうではないと思います。

良い姿勢の条件は、力学的、形態学的な安定だけではなく
その判断基準は、色んな視点によって変わり
また、その捉え方によって異なるからです。

しかし、動きやすさを求めて得られたものや
何かに都合よく合理的なものは、必ずしも良い姿勢とは限らず
むしろ、良い姿勢は少しの強制があって成り立ちます。

だから、どこかでその動機付けをする必要があり
客観的に評価できる、いわゆる良いとされる姿勢に近付けることは
正しい身体の使い方の基礎となると考えるので
治療に際し時間をとってアライメント(ある姿勢における骨の位置や
身体各部位の並び)を診ることになります。

 

連動②

姿勢

やわらかい‐かたいは相反する言葉でありながら、両者は同義にもなると考えます。

全ての動きはその中に必ず“止まる”を含みます。
言い換えると、動くためにはある姿勢を安定させる必要があります。

歩行を例に挙げると、股関節‐膝‐足首と関節が曲がる、伸びるの役割を担い
地面に体重を伝えることで前に進みます。
関節が柔らかく使えれば大きな歩幅で進むことができます。

一方で、足裏が地面と接している時、伝えた体重によって
返ってくる反動に耐えなければ進むことはできません。
強い反動に耐えるほど大きな歩幅になります。

全身の連動で関節を曲げ伸ばしし
地面と接する瞬間は止めるということを繰り返し歩行が成立します。

そうすると、全ての姿勢は力を伝えることと、支えることで成り立ちます。

客観的に止まって見えても同じことが言えます。

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関節(や筋)をやわらかく使い、また、強く(かたく)支えることで安定が得られます。

よって、姿勢の安定の意味では、両者は相反する言葉でありながら同義となるのです。

また、両者はその大きさが等しければ、より安定し代償や補填を生みません。

ある一点を切り取って評価しても、本質は見えないことがあるのです。

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