“こうれい”の“こう”は?と尋ねられた。
私はリッシンベンにイチしてヒしてイチと応えた。
応えるまでのわずかの間に、“高齢”の“高”を大の大人が解らないはずがない
だから“恒例”のほうだと思った。
漢字という特殊な文字のせいもあるだろうが
日常的に、日本人は相手の意図を“勘ぐる”人種だと私は思う。
勘ぐるは、良い意味で捉えられないが、その意味の中に
本当かどうか、真意かどうか、想像するというのがある。
会話で発する言葉には、その場を取り繕うためであったり
相手を尊重し譲歩したり、真意からかけ離れることがある。
特に日本人はこういった気質を持っていると思う。
昔堅気の頑固おやじが持っていた言わずに解かれ的な風潮が
正しいという余韻があって、それが更に助長しているのだと思う。
だから、余計に発した言葉の裏に真意が隠れていないか想像する。
相手の真意を知っていれば、勘ぐるは簡単だが
解らず勘ぐるのはとても大変な作業になる。
だから、私は相手の口から出た言葉はできるだけ勘ぐらないようにしている。
仮に、真意ではなくても一度言ってしまうと責任が生じ
少なからず本人の意図となると考えるからだ。
その上で、真意は何かを探れると良い。
言いたいことは何でも言ってしまえば簡単だが
世の中そんなに単純ではない。
ただ勘ぐりすぎは、独り迷走に陥り
相手のことを想う余り、自分が苦しみかねないので程々が良い。
病気やケガを“治す”という言い方があるが私は好きではない。
結論から言うと“治る”が正しいと思っているからだ。
病気やケガと言っても色んな状態があって
目に見えるものから客観的に全くわからないものもある。
しかし、その対処法や症状を和らげるための方法が確立されたり
色んな方法論があるものは身近に感じることができ
少し乱暴な言い方だが、体がしんどいことに対して不安が少ないと思う。
一方、しんどいことへの対応が不鮮明な症状は不安が大きい。
私たちの仕事はこうした大小の不安に対して
色んな引き出しを提示して一緒にやってみることだと思っている。
かつ、それらに序列を設け優先順位が付けれればもっと良いと思う。
肩こりと言っても何が原因の肩こりかで対処法が変わってくるということだ。
しかし、最も大切なのは目の前の引き出しを開けるかどうか
また自分が望むのはどんな状態かということを認識できているか
更にそれを遂行できるかということだ。
だから、最後のひと押しは他人ではなく本人によるものだと思うから
“治る”という表現が正しいと思う。
鍼灸師として身勝手で無責任な表現かもしれないが
そこが症状の本質を左右する一線だと思う。
これで治療は終わりですという線は
我々の仕事ではなかなか引くことができないのだが
昨日それができる患者さんがあった。
とても清々しく心から嬉しかった。
そして間違いなく最後のひと押しをしたのはご本人だった。
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